近ごろ、耳鳴りがする。
風邪をひいて、鼻をかみすぎた所為かも知れない。もしくは、人の話を懸命に聞かなくなったからかも知れない。
一番よく聞こえるのは就寝前の静かな部屋の中だが、これがなんとも可笑しな耳鳴りなのだ。「キーン」とか「ジーン」ではなくて、
「ピーィ プーゥ」なのだ。あの、豆腐屋さんが吹いてる、「ピーィ プーゥ」なのだ。たまに、リズムが狂って「ピプッ! ピーィ プーゥ」という。
生き物みたいだなぁ…と眠たい私は思う。「ピプ」は、寝るまでずっと私に子守唄を聞かせてるみたい。ゆっくりと、右耳だけに子守唄。
幼少期おばあちゃんの家に行くと、座る度に鳴る子供用の椅子があって、あれと同じだ、とふと思う。幼いながらにあの音が恥ずかしくて、ゆーっくり座ったり立ったりしてみたが、結局広範囲に「ピーィ プーゥ…」の音だけが虚しく響くのであった。「ペキョペキョ」鳴るあの靴も同じだ。
日中、電車や街の中では「ピプ」は鳴らない。期待すると返事をしない。むしろ耳が喋ってるくらいだから、私が話かけるなんて事しない方が妥当な気もしてくる。
冬の始めに、いい友達がでけた。