2013年11月27日水曜日

耳屋の豆腐


近ごろ、耳鳴りがする。

風邪をひいて、鼻をかみすぎた所為かも知れない。もしくは、人の話を懸命に聞かなくなったからかも知れない。

一番よく聞こえるのは就寝前の静かな部屋の中だが、これがなんとも可笑しな耳鳴りなのだ。「キーン」とか「ジーン」ではなくて、

「ピーィ   プーゥ」なのだ。あの、豆腐屋さんが吹いてる、「ピーィ   プーゥ」なのだ。たまに、リズムが狂って「ピプッ! ピーィ  プーゥ」という。

生き物みたいだなぁ…と眠たい私は思う。「ピプ」は、寝るまでずっと私に子守唄を聞かせてるみたい。ゆっくりと、右耳だけに子守唄。

幼少期おばあちゃんの家に行くと、座る度に鳴る子供用の椅子があって、あれと同じだ、とふと思う。幼いながらにあの音が恥ずかしくて、ゆーっくり座ったり立ったりしてみたが、結局広範囲に「ピーィ   プーゥ…」の音だけが虚しく響くのであった。「ペキョペキョ」鳴るあの靴も同じだ。

日中、電車や街の中では「ピプ」は鳴らない。期待すると返事をしない。むしろ耳が喋ってるくらいだから、私が話かけるなんて事しない方が妥当な気もしてくる。

冬の始めに、いい友達がでけた。

2013年11月23日土曜日

おいらのポッケにゃ


私のポケットは
毎日更新されるポケットです。

コートもシャツもズボンのも
今日のも明日も明後日のも
新しい空気を含んでいいかんじ。

朝、お気に入りのキーホルダーが
ついた鍵とパスモを、右のポッケに
入れます。右に入れるのはこの二つ。

左のポッケは日によって様々です。
イヤホンとかノートとかペン、
飴ちゃんやガム、拾ったボタン…

今日はミカンと落ち葉と文庫本。

戸締りをした鍵を右ポケットに
チャカチャカいわせていざ出発。

駅へ向かう途中の公園や坂道で
ハッと止まって落ち葉を拾う。
「手紙に入れたろ〜」

電車に乗ったら本を取り出す。
たまにイヤホンをしながら本を
読むけど、音楽は流していない。
ただの防音。

そういう人、他にも居ないかしら

それで、別に用がなくても
ポッケに手を入れて歩く。
グーにしたりパーにしたり。

お腹が空いたらミカンを食べる。
喉が乾いたら小さいペットボトルを
沈んだポッケから引っぱり出す。

一日を終えて家に帰ると
全部ポケットから追い出す。
明日同じコートを着ようとも。

詰め放題、あんまりパンパンだと
みっともないから、毎晩ちゃんと
深呼吸をさせます。

あなたのポッケは携帯電話の他に
何が入っていますか?

2013年11月20日水曜日

ガタヨロプン



私の手前に、陽がさした。

毎朝通る公園の、木と木の間。
スカッと通るか、モゾッと通るか。

小学生、慣れない自転車をガタボコ言わせながら、土から盛り出た木の根を踏んづけて走った。するとお母ちゃんがやって来て、「根っこだって生きているんだから踏んじゃぁ可哀想よ。」と言う。それで私は、なるべく木の根元は避け、クネクネヨロヨロ走って遊んだ。

今でも通る公園の、木と木の間。

嫌なことがあった日は、わざと根の上を歩く。ズンズンズン!でも木は微動だにせず、立ち続けている。それで自分の子供じみた行動が恥ずかしくなって、落葉を愛でて許してもらう。

「やぁ〜ちょとね、上手くいかない事があってさ。ごめんね、踏んだりして。この葉っぱ、君が落としたやつ?やぁ〜実に良い色だね。スイートポテト色、濃厚な赤。乾燥した歪み、実に美しいねぇ〜。」とか言って。励ましてもらっている。

2013年11月15日金曜日

フゥフゥの発熱


熱が出て、仕事を休んだ

ボ〜っとした頭で、小中高、よく学校をズル休みしたのを思い出す。なんだかな〜と思いつつも、温いお布団の幸せを堪能した。「あらもうお昼か、道理で体がギシギシしてきたわけだよ。家族みんな出掛けたし、テレビでも見ようかねぇ。」チビまる子ちゃんのような正しいサボり方である。

もちろん、本物の病人としてお休みしたこともある。そんな日は、鼻づまりや腹痛を抱え、仕方なく己を恨みながら布団をかぶる。熱にうなされ、誰もいない午後にふと目を覚ますと、広い額にうっすら汗をかいている。グッタリ気だるい身体で起き出して、トボトボと台所へ向かう。ヤカンに火をつけ、シーンとした部屋に響く「チッチッチッチッ…」という音を聞くとそれに合わせて、ドロンとしていた心臓にリズムが蘇る。「トットットットッ…」

湯が沸く間、コップに蜂蜜と檸檬を絞って待機。サボりの時は、こんな事さえしないのに本当に体調が悪いと少しは自分を労わる様になるらしい。熱々の湯をコップに注いで、どっこいしょっと、ヒンヤリ冷たい椅子に腰をおろす。猫舌なので、コップの水面をフゥフゥ揺らしながら、こんな一日もいいもんだ〜と、ふと思う。

なので久々にお休みを頂いた今日は、なんだかいい一日だった。熱もだいぶ引いたし、明日は元気に働こうかのぅ。

2013年11月10日日曜日

ツンデレきょうだい


冬の所為かな。

こないだ初めて、「2人で食べるご飯どきの寂しさ」を感じた。吉本バナナさんや江國香織さんの小説に出てくる「一緒にいる故の寂しさ」みたいなもの。

なんにもない、けど、なんでもある
なんでもある、けど、なんにもない

どっちかしら。
哀しくないし、ご飯も美味しい。
相変わらずの冷え性と、温い床。

ただ、互いにちょっと気を使っている。今まで気を使うなんてことはなかった仲なのに、18を過ぎた二人は、少し大人になって相手を気にかける。それが「二人でご飯を食べる寂しさ」の原因らしい。

「もしもし。君、今晩は何を食いたい?え、オムライスはこの前食ったろう。でもまぁ、卵は何個あるの?」

「なぁなぁ、ケチャップ足りなかったね。なんで買ってこなかったのさ。でもまぁ、このフワフワの卵、美味いなぁ。」

私たちは、ツンデレきょうだい 。
今宵もやっぱり、オムライスは美味しいし、ケチャップも薄く伸ばせば、なんくるない。

褒めて伸ばせ、伸ばされろ。
「じゃぁ食器洗いよろしくね」
「…………z Z Z 」