2015年5月27日水曜日

埼玉のおばちゃん



5月中旬 埼玉に行った話を。

私には田舎がない。小学校の夏休み、べつに面白いこともなく「お盆ってな〜に〜」とブーたれる私と弟を、母が埼玉の大叔母(母のおば)の家によく連れて行ってくれた。田んぼの蛙、似た造りの家々、知らない子が通う小学校、弟と二人乗り自転車、今は亡きおじさんが教えてくれた美味しい切身マグロの見分け方…もうだいぶ前のこと。懐かしい田舎の記憶になりかけていた。

久々の2連休には 思い立って埼玉を選んだ。そういえば一人で遊びに来るのは始めてだ。おばちゃんに会うのは祖父の葬式以来6〜7年ぶり。穏やかで刺繍も料理も上手な、血のつながった私のおばちゃん。

駅に着くと互いに「変わらないねぇ!」と言いながら「お腹空いたでしょ、一人だと入りにくいけど、ここ美味しいのよ」とエキナカの〈餃子の満州〉でお昼を食べた。おじさんが亡くなってからずっと一人で暮らしているけれど、早朝のお経を唱えてからのウォーキング、お料理・ヨガ教室など 近所の明るい おばちゃん達と元気な日々を送っているご様子。24の私より、70のおばちゃんの方がずうぅっと健全のように思えた。


夜は手料理を頂きながら 色々な話をした。仕事を始めてから気づいたこと、出来るようになったこと、作家活動、家族のこと。ペースよく3杯目のワインを飲みながらおばちゃんは、母が私くらいの頃の話や、私が生まれるずっと前に病死した祖母の話を聞かせてくれた。思わず、二人して涙目になってしまった。私がこうして少し浮世離れしながら生きていられるのは、母が背中を押したり、さすったりしてくれるからだ。どんな想いでこんな宇宙生物を育ててきてくれたのだろう。たった二日だったけれど、すごく元気が出た。

帰る日、2階の本棚から気に入りの作家を見つけ「おばちゃん、これ借りていい?」と聞くと「そろそろ遺品整理始めるから、あげるよー」と笑いながら話せるのも嬉しい。帰りの電車で読んだらすごく面白くて、すっかり気に入った。大切な遺品に育てられそうだ。