二階で皆と一緒に過ごしている ばぁちゃんは、今は施設暮らしなので、ここ一年くらい 人の気配はあまりなかったと思われる一階。
ベッドへ身投げし、ふ〜ぅ…。と溜息をつくと、この一間が静かすぎるのに気がついた。部屋中が 音をすっかり吸い取ってしまい、まるで真空状態だ。床も壁も天井も内側に向けて窮屈に鳴いているようだった。
不思議な気分。耳鳴りがする。常に 音で溢れる土地に 身を置いていることや、閑静な夜路も 足を止めずに歩いているのだと気づかされた。〈静寂〉とはこれかぁ と思いつつ、隣にじーちゃん来てたかも。とも思う。
いま悩みごとがある。一人でゆっくり考えたい。考えるのは、自分でも気付かぬうちに だいたい決めている応え を確認するため。隣にじーちゃんが居てくれたら ヒントをくれるかも とも思う。
仕事中も電車でも 思い詰めて 苛立たしくなるが、みっともないので抑える。それの繰り返し。あの部屋と一緒。苛立ちが 頭の中で窮屈そうに 鳴いている。殺気立つというか…そういう静けさってすごい力だ。