2015年8月29日土曜日

秋のこと



夜、気がつくと秋虫たちがリーリー鳴いている。リリーと名付けて羽音を愛でているこの頃は、日が落ちるのも早くなった。

大学時代、冬になると皆帰りが早くなり 閑散とした校舎が寂しくて嫌いだった。寒いピロティに一人残り製作をしていた2年生の冬、仲間の少年が「一緒に食べよう」と私の大好きなお汁粉を買ってきてくれたことがあった。あれはドキドキしたし本当に嬉しかった。冬ならではのオセンチに浸って それからしばらく用もないのに残っていたっけ。

今週の月曜日に突然、秋がきた。
その日は仕事も休みで頭も重くて 一日中眠っていた。すっぽり手の甲まで包む長袖のトレーナーを着て、最高に心地よい「そよそよ」と吹く風や揺れるレースのカーテンを見ていたら「これは眠るしかない」と思った。

安心して眠っていたら、突然苦しくなった。胸のあたりが。鼻の奥が。泣きそうになった。ようするに「きゅっ」となったのだ、心が。半分開けた窓から入る風の匂い(…なんとオセンチな台詞でしょう。でも実際、季節で風の雰囲気はがらりと変わるのだ。)それが、大学時代の秋冬の感覚を思い出させた。思い出に浸りすぎるのは良くない。でも楽しいのだ、恥ずかしくてせつなくてワクワクして。

この半年、そんな感覚集めが鈍くなっている。何かを諦めようとしている。「どうせ」という言葉が口先からこぼれそうになる。そういう時は 気持ちを文字におこす。前より写真や絵の数は減ったが、ノートの文字数が増えた。書体に気をつかって描くうちに気持ちが落ち着いてくる。狂気している時は行書のように、もやもや考えながらペンを進めるときはゆったり大きめに。

…前にも同じようなことを書いた気がしてきた。
感覚が止まっているのだ。