2013年6月20日木曜日

こーり、ください。


こーり、ください。

こーり、あげます。

小学生の頃、冷凍庫の製氷機がキライだった。ガラガラッといって勝手に氷を作ってくれるやつでないので、自分で型に水を入れてそれを三段分つくって冷凍庫で冷やす。そんで固まったら型をギシギシ歪ませてケースに氷を落とす。

夏休みは特に氷に手がのびる。するとケースの氷はすぐ底をつく。

もう無くなっちまったよ、とボヤきながら面倒くさがりな私は、また直ぐに作らないで済むように型一杯まで水を入れたが、それが余計に事を難しくしていた。

表面張力を発揮した型をソロソロと両手に持ち、ゆっくりと背の高い冷凍庫に足をむける。あ、いけない!扉を開けるの忘れてた!慌てて型を置こうとして床に水をぶちまける。あーぁ。

TAKE2。今度は扉をあけて冷凍庫に受け入れ体制をとらせ、それからまたソロリソロリと半回転し型を運ぶ。ついに扉を超えた!と思ったら、おやおや爪先立ちしないと押し込めない。プルプルと足先でふんばり冷凍庫を覗こうとすると、閉じかけた扉に腕が当たり、私は再び水を浴びるのだった。あーぁ。

ちっとも学習する姿勢を見せず、毎度同じ事を繰り返し、ついにすすんで氷を食べたいと思わなくなった、だって作らなきゃいけないから。

でももしかしたら、そんな事をわざとやっていたのかも知れないと今思う。あーぁ、またやっちゃった!へへへ、と笑ってるのが楽しかった。人から見たら何やってんの、シッカリしなさいよと思われるようなことが、私にとっては楽しいんだからしょうがない。言われることが、じゃなくてこっちの世界が勝手に楽しい。

しょーがないんだけど、いつまでも床を濡らすわけにはいかないので視点をかえる事にした。氷は見るもの、になった。グラスの中でもバケツの中でもアラレでも。そしたら、悪くないように思えて、いつか丁寧に氷を作るようになった。

今はもう背も届くし、片手で扉の開け閉めだって出来るけど、不器用な私だって嫌いじゃない。今できないこともオバァチャンになったら出来るのだろうか。生きてる中で、あと何百万回、あーぁ!と思うのだろう。小さい私はオバァチャンになっても氷をボリボリたしなむ、丈夫な歯が欲しいのである。

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