2015年9月11日金曜日

神保町の片隅で。


八月の末、神保町の夜。
友人ふたりに混ざって、居酒屋の片隅。

彼らは美大4年間、いつも二人で居て 女の子とはあまり話さない様子だった。そこには 私の知れない〈彼らだけの楽しみ〉が在るようで、こっそり うらやましかった。同じ研究室に入ってからも 私は所在なく、浮ついた心のまま過ごしていた。

気鬱だったある年の文化祭。ため息まじりに 準備中の校内をほっつき歩いていると、手放しにしていた 文化祭の出し物である壁画を、「なんとか完成させよう」と 二人が残って描き続けていた。日も暮れかけだから、塗った色が判断しにくかっただろうに。

その時の私は もう〈なんでも、どうでもいい気分〉で、彼らの描くのをただ側で 眺めていた。一緒に描いたか、邪魔しちゃいかん と見るだけだったかは忘れてしまった(もしかしたら「残ってやってけ」とは 実行委員だった私が言ったのかも知れない。)…そうやって、その時も「仲良しでいいなぁ」と 駄目駄目ジッコーイーンは指をくわえていた。


そして先月。卒業後 2年ぶりのM君と、去年 展示に来てくれたY君。「…まさかこの3人で呑む日がくるとはねぇ」と (いつもの)二人と、特別ゲストの私が、口を揃える。きっかけは、M君が旅先ブログに載せていた神社に「私も行ったよ〜!」と連絡したことだった。いい所だったので、お礼を兼ねた久々のメールだった。

すると なんと、定期的に開く二人会に「おいで」との お声がかかった 。もう嬉しくって それから一週間、私のシッポは ルンルン回転を続けた。呑み会はとても楽しく、あっという間だった。ほどよく酒のまわった じーちゃん(Y君)が隣のソファに沈んでゆく姿や、M君が親戚の おいちゃんみたいに「美味しいからさ、あったかいうちに 食べなよ」と 唐揚げをすすめてくれるのも、もちろん 絵や大学時代の話も 面白かった。一方は漫画家に、もう一方は繊細な絵を描き続けている。

私はこれと言って胸を張れるものは ホントはないくせに、作りためたブローチを ちゃっかり ハンカチに広げて披露した。喋れば喋るほど 的を得ない 拙(つたな)さが あらわになってゆき、恥ずかしかったなぁ。

あれから、前進する二人に影響を受けて 小説を 書き始めた。今の自分の気持ちを「カタチ」ではなく「文字」に ただして 知ろうと思ったのだ。すごく恥ずかしいものが出来るだろうけれど、それでもいいや。

ちなみにあの時、壁画の前で 私は彼らに アンパンマンチョコを差し入れたそうだ。果たして オヤツで二人の心は釣れたのか。私には〈 夜通し眠たげに過ごして 、明け方に ドーナツとホットミルクで 別れたいような 〉、面白い二人になったけれど 。

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